◎脇のお悩みを解決するボトックス注射とは
わきの汗ジミで人目が気になる方や常にタオルが手放せず、一日に何度も制汗剤やシャツを着替えなおす方にはぜひワキ汗外来の受診をおすすめします。ワキ汗外来では、ボツリヌス療法を用いて腋窩多汗症や腋臭症（わきが）の治療を行うことができます。
a.ボトックス注射とは
ボツリヌス菌がつくる天然のタンパク質を有効成分とするお薬をワキの下に注射する治療法です。ボツリヌス毒素（ボツリヌス菌が産生する毒素）から抽出した成分を用います。ボツリヌス毒素はその名の通り、毒性の高いものなのですが、そこから毒性を除去しているので、安全に使用できます。
皮下にボツリヌス菌によってつくられた注射薬を注射して、交感神経から汗腺への刺激の伝達をブロックすることによって発汗を抑えます。手足、わきなどに用いられます。非常によく効く治療法なのですが、効果はずっと持続するわけではなく、効果の持続期間が最大で6ヶ月くらいなので、継続的な治療が必要です。
b.ボトックス注射の効果
ボトックス注射は、わきの下に注入することでエクリン汗腺の活動を抑制し汗の分泌が抑えられます。汗腺を取り除くわけではないので、効果は永続的なものではありません。年１、２回程度の治療で汗を抑えられストレスを軽減してくれます。
c.保険適用について
ボトックス注射は、全ての人に対して保険が適用されるわけではありません。保険が利くかどうかは医師が判断し、症状の程度により保険適用の可否が決まります。適用となるのは原発性腋窩多汗症の一定の基準を満たす必要があります。
【診断基準】
明らかな原因がなく腋窩（わきの下）の汗が6ヵ月以上続く
左右対称に汗をかく
1週間に1回以上、多量の汗をかく
睡眠中は汗が止まっている
汗によって日常生活に支障をきたしている
血縁者に同様の症状の人がいるなどが挙げられます。
d.基本的な治療の流れ
問診で診断基準・重症度判定に当てはまるか確認します。必要に応じて採血、血圧測定などを行なわれます。そして同意書にサインをして、予約となります。
施術日には、まず両わきの発汗検査を行い、発汗部位を確認します。発汗部位に効率よくボトックスが投与できるようマーキングを行い、痛みを軽減するためのアイスパックを数分間両わきに当て、ボトックスを片方あたり10〜15ヵ所ほど投与します。施術時間はわずか10分程度です。 そのあとクーリングをして帰宅します。
個人差がありますが、注射後２〜3日で効果が現れる場合が多く、効果の持続期間は一般的に４〜9ヶ月効果があるとされています。
e.副作用
内出血、注入部分に発赤、腫れ、痛み、つっぱり感、熱感、硬結を生じる事があります。副作用はまれとされていますが、アレルギー、感染、痺れ、倦怠感、頭痛、筋肉痛、蕁麻疹、痒み、むくみ、発熱、咳、冷や汗、胸痛、アナフィラキシーショック、眼の異常感、眉毛下垂（眉毛の位置が下がる）、眼瞼下垂（まぶたが下がる）などが生じる場合があります。不安がある方は事前に医師と確認しましょう。
それら副作用の多くは、適量以上の注入による薬剤の効きすぎが原因で起こりますが、通常、眉毛下垂や眼瞼下垂などの副作用は、半月から1ヵ月程度で消えます。
ボトックス注射に対する筋肉の反応性には個人差がありますから、過去に注射して効きすぎた経験がある場合は、医師にその旨をしっかりと伝えて、注入する量を調整してもらうことが大切です。また、治療後に何らかの異常が現れた場合には、直ちに医師に連絡しましょう。
f.脇のボトックス料金
保険適応の方で、約22,000〜30,000円（税別）程度となります。保険適用外の方は受診される病院によって開きがありますが約50,000円〜150,000円（税別）ぐらいの料金がかかります。受診される前にホームページ等で調べて受診しましょう。
g.ボトックス注射が受けれない方
いくら安全なく薬でも、危険が伴う方は注射できません。例えば、以下の方々です。
全身性の筋肉の病気（重症筋無力症、ランバート・イートン症候群、筋委縮性側索硬化症＜ALS＞など）
妊婦または妊娠している可能性のある婦人および授乳婦
過去にボツリヌス治療を受けてアレルギーを経験した方、使用中の薬剤がある方（特に抗生物質、筋弛緩剤、精神安定剤など）
2回目以降の注射は、前回から4ヵ月はあける必要があります。
ボトックス注射後、女性は2ヵ月、男性は3ヵ月の避妊が必要です。
喘息などの慢性的な呼吸器疾患や緑内障のある方は医師に伝えてください。また他の医療施設にてボツリヌス製剤で治療を受けている場合は、対象疾患及び投与日・投与量を必ず申し出ましょう。
◎腋臭症（わきが）の治療にも効果
ボトックス注射による制汗が、わきの臭いを抑えるにも有効です。 ボトックス注射でわきが臭が改善するのは、汗腺抑制注射がアポクリン汗腺からの発汗を抑制するからではありません。
アポクリン汗腺への神経伝達物質はアドレナリンなので、ボトックス注射の抑制は受けません。アポクリン汗腺から出る汗自体には元々臭いはなく、エクリン汗腺からの発汗で湿潤状態になった皮膚で、アポクリン汗腺から出る汗がワキの皮脂腺から分泌される脂肪酸と一緒に、ワキの皮膚の細菌に分解されると、臭いを発するようになります。
ボトックス注射でわきが臭が軽減するのは、エクリン汗腺から発汗を抑えることでこの湿潤状態が改善し、皮膚の細菌の増殖を抑えることができるので効果があります。
多汗症とわきがのお悩みは、とてもデリケートな問題です。誰にも相談できず、長年一人で悩み続けてきたという方も少なくありません。多汗症とわきがで悩み対人関係に消極的になってしまうのは残念なことです。ボトックス注射で切らない多汗症、ニオイ対策をぜひお試しください。
